物思いに耽っていると、玄関の扉が開き、中から雨姫さんが顔を覗かせた。
「雨姫……さん?」
随分と印象が変わった雨姫さんの姿に目を丸くした。腰まであった髪は肩の位置まで切り揃えられている。
「いらっしゃい」
「あ、あの、これよかったら……」
手土産を渡すと、雨姫さんは申しわけなさそうに頭を下げた。
「わざわざごめんなさいね」
「いえ」
「とりあえず、あがってよ」
「お邪魔します」
雨姫さんに招き入れられ、僕は玄関に足を踏み入れる。扉を閉めるなり、雨姫さんは僕の方へ振り返り、顔の前で両手を合わせた。
「今回のこと、本当にごめんなさい!いいわけにしかならないけど、あの日は酔ってて、ついお父さんにあんなこと言っちゃって」
「や、やめてください! 謝るのは僕の方です。雨姫さんとの約束も、結局守れないかもしれない」
「それは私が蓮くんのこと知らなかったからよ。気にしないで。今も変わらず妹の大切な人として認めてるわ」
雨姫さんに関係を否定されてしまうと思っていた僕は、その言葉に救われた。
「ありがとう……ございます」
認められたことが嬉しかった。
「お父さん、リビングで待ってるから」
「はい」
僕は深呼吸をし、リビングへ足を踏み入れた。