そう思った瞬間、突然グイッと胸元を引っ張られ、現実に引き戻される。そのまま那音の真剣な瞳に捕まり、僕はそれ以上動くことができなくなってしまった。





「お前、オレの気持ちが分かるか?」





「え?」





「お前のこと、上辺うわべだけの親友だと思ったことは一度もない」





 僕は那音の言葉をじっと聞いていた。





「知らないだろ。お前、教室の隅で今にも死にそうな顏してたこと」





 僕は那音の言葉にハッとした。そこまで見られていたとは、知らなかったからだ。





「そのくせにクラスの皆の前だと適当に笑ってクラスの優等生演じてさ。宿題見せてやったり、適当にいい奴演じてただろ。最初はそんなところが大嫌いだったよ、正直な」





 話を続けながら、次第に僕の胸ぐらを掴んでいた那音の力が抜けていく。





「嫌いだからこそ、気になってたっていうか、人間として興味持ち始めて……そしたらいつの間にか話すようになって、お前の力になりたいなって思ったんだ。これが本当の友達なのかなって思ってさ」





「那音……」





「親友が欲しかったんだよ、オレ。漫画みたいな友情にガキの頃から憧れてたんだ」





 それは、初めて聞く那音の本音だった。