どこからか誰かが叫んでいる声がした。
「太陽......」
晴馬の事故の記憶がフラッシュバックする。
雨の音が大きくなり、人々の動きが止まった。
あの時と同じだ。
「いやだ......」
私は人だかりのできている方へと走った。
「っ......」
その光景を見た瞬間、再び人々が動き始めた。
「うそ、でしょ......」
そこには頭から血を流し、倒れている太陽の姿があった。
「太陽!」
急いで彼に駆け寄る。
太陽はめをつぶり、全く動かない。
手を握る。
まだ少し暖かい。
「君、この子の知り合いか?」
背後から声をかけられた。
そこには、スーツを着た男の人が立っていた。
「は、はい」
「今、救急車を呼んだ。止血をする、だから大丈夫だ。そばにいてやってくれ」
そう言うと、男の人は慣れた手つきで止血をし始めた。
私は彼の手を強く握り続けた。
お願い神様、もう私から大切な人を奪っていかないで。