「お母さん、ごめんね」

「どうして?」

突然、謝った私にお母さんは戸惑っている。

「私ね、今までいろんなことから逃げてたの」

「逃げてた?」

「うん。お母さんからも逃げてた」

「美琴......」

みんなだけじゃない、たった1人の家族のお母さんからも逃げていたんだ。

「お母さんが私に気を使ってくれていることはわかってた。無理に笑顔を作っていることも」

「そ、それは......」

「私はお母さんが私のことを恨んでるから、だからこうやって笑うんだ。それなら話さないままでいい
。向き合わないままでいいって、逃げてたの」

「恨んでるだなんて、そんな......」

「うん、わかってる。お母さんの本当の気持ち。ううん、今日わかったの」

やっとわかったこと。

それは娘を心から愛している母親だから出来ることだって。

「私はもう大丈夫」

「本当に?」

「うん!それに私ね、私を好きでいてくれる人を見つけたの」

あ、私を好きでいてくれる人って......

言った後から恥ずかしくなってきた。

そんな私を見て、お母さんは不思議そうな顔をしている。

「え、あ、その.......」

なんと言えばいいか分からず、私がおどおどしていると

「美琴の彼氏さんに会えるの楽しみにしてるわ」

と、お母さんは半分私をからかっているような嬉しそうな笑顔を見せた。

「彼氏って......」

「違うの?」

「いや、まだ、彼氏じゃないっていうか......付き合ってないというか......」

「それってどういう関係なの?両思いなんでしょ?」

なんだかお母さんは楽しそうだ。

そんなお母さんの笑顔は作り物じゃない、心からの笑顔だった。

また、2人で笑って過ごせることが嬉しかった。