ーピンポーン


「はい」

「お久しぶりです......」

「あ、美琴ちゃん......」

あれから1年。

私は晴馬の家に来ていた。

「わざわざありがとね」

そう言って、晴馬のお母さんは私を仏間へと案内してくれた。

晴馬のお母さんに会ったのはお葬式の日以来だ。

線香をあげて仏壇の前で手を合わせる。

仏壇に飾ってある写真の中の晴馬は楽しそうに笑っている。

「じゃあ、私帰りますね」

そう言って私は帰ろうと立ち上がった。

すると

「美琴ちゃん、もう少しだけいない?」

と、呼び止められた。

「は、はい」

なぜ、呼び止められたのか分からず戸惑ってしまった。

客間に通され、座布団に座る。

ここでよく、晴馬と晴馬のお父さんとお母さんとおしゃべりをした。

「ごめんね、こんなものしかなくて」

そう言って晴馬のお母さんはお茶とお菓子を出してくれた。

「そ、そんな。わざわざありがとうございます」

出してもらったお菓子を見ると、そこには晴馬の好きだったクッキーがあった。

「あっ......」

「このクッキー、晴馬が好きだったから今日、用意してみたの」

と、言って晴馬のお母さんは少し笑った。