「お前ら、美琴に何してる!」

そう言って太陽は私をかばうように5人の前に立ちはだかった。

「邪魔しないでくれるかな?」

と、突然、一番手前に立っていた男子が太陽の腹を殴った。

「っ......」

「太陽!」

私がそう言って彼に近づこうとすると

「大丈夫だから」

と、言って太陽は笑った。

痛いのを隠しているような笑顔だった。

「太陽......」

そんな彼を見て

「余裕あるんだな」

と、今度は太陽の顔を狙って殴りかかってきた。

「ちょっと!あんたたちいい加減に.....」

女の子たちも止めに入ってくる。

でも間に合わない!


バシッ


その瞬間ものすごい音がした。

太陽の後ろに立っているから私には何が起こっているのかがわからない。

しかし、前に立っている人たちは目を見開いている。

何が起こっているのかわからず、私が不安でいっぱいになっていると

「っ.....離せっ」

殴りかかった男子は険しい顔をしながら太陽に言った。

よく見ると、太陽がその男子の拳を掴んでいた。

「だったら、もうこいつには手を出すな」

太陽は今までに聞いたことのないような低い声で言うと、男子の手を離した。

太陽ってこんなに強かったんだ......

そんな太陽の迫力に怖気付いたのか、後ずさりをした。

このまま、ケンカになったりしたらどうしよう......

そう私が心配していると

「逃げるぞ」

そう小さな声で太陽は言うと、私の腕を掴み走り出した。

「ちょっと!」

その瞬間、5人の顔が見えた。

5人はとても怖い顔をして私達を見ていた。

さっきの彼らの会話を思い出す。

このままでは太陽も巻き込んでしまう。

私の近くにいたら、きっと太陽も辛い思いをする。

だから私は太陽の暖かい手を振りほどいた。

「離してっ!本当、迷惑!」

私はこの人を突き放すことを選んだんだ。

いきなり手を振りほどいた私に太陽は驚いたような顔をした。

「美琴?」

太陽の優しい声。

涙で視界が歪み始める。

「あなたのせいでイジメがひどくなってることに、どうして気づかないの?」

「え?」

本当はこんなこと言いたくない。

そばにいてほしいのに......

私は涙を隠し、彼に背を向けた。

「だから私と関わらないで」

そう冷たく吐き捨て、歩き出した。

すると

「待ってくれ!」

と太陽が私の腕を掴んだ。

「何よ......」

今、振り返って彼を見たら、泣いてしまう。

「俺はただお前のことが守りたかったんだ」

「っ......」

やめてよ......

そんな風に言われたら、この腕を振り払うことができなくなる。

「だから、それが迷惑なのよっ」

本当は迷惑なんて思っていないのに。

「気づかなくてすまなかった」

「なんで、あなたはそんなに私のことを......」

そんな私の言葉を勢いよく遮り

「好きだからに決まってるだろ!」

と太陽は言った。

「そんな......」