「おはよう、美琴!」

今日もうるさいやつがきた。

こんなに暑いのになんでそんなに元気なのよ......

「おはよう」

小さな声で挨拶を返す。

本当は挨拶でさえも会話みたいで嫌なんだけど。

でも言わないと太陽はうるさいから。

「よしっ!」

そう言うと太陽は満足そうな顔をして席に着いた。

「はぁ......」

ため息をつき、窓の外に目をやる。

しばらく外を見ていると突然、寒気がした。

え、何?

誰かの視線を感じる。

また誰かが私をバカにしているのだろうか。

でもそんな冷たい視線ではない。

なんか熱いというか何というか......

少し気になり恐る恐る振り向いた。

するとそこには真っ直ぐに見つめている太陽がいた。

「っ......」

目が合い、一瞬心臓が大きく跳ねた。

しかし私はそれを隠すように

「なに?」

そう冷たくこたえた。

そんな私の反応を御構い無しに太陽は

「美琴って綺麗だよな」

と何のためらいもなく言った。

まるで本当のことを言っているかのように。

心臓の鼓動がどんどん速くなっていく。

その言葉に懐かしさと悲しさがぐしゃぐしゃに混じり合っていく。

なぜなら今まで私に『かわいい』や『綺麗』と言ってくれたのは晴馬だけだったから。

でもこの人は私のことをバカにしているだけかもしれない。

「からかわないで」

私は色々な思いが混じり合っているのに気づかれないように言った。

しかし太陽は

「からかってねぇよ」

と真剣に言ってきた。

この人の考えていることが全くわからない。

「やめて......」

もう人を信用しちゃいけない。

「え?」

「どうせ私のことバカにしてるんでしょ」

この人もみんなと一緒。

「してないって」

「してる」

「してねぇーよ!」

「してるのっ!」

いつの間にか私は立ち上がり、太陽に怒鳴ってしまっていた。

太陽は目を見開いて、私を見上げている。

クラス中のみんなが私を睨んでいるのがわかった。

もう、いや!

私はクラスの空気に耐えられず、教室を飛び出した。