「いってらっしゃい」
そう言って私に笑顔で言ってくれたのはお母さんだ。
唯一、私に笑顔を向けてくれる人。
今は太陽もいるけど。
でも私はお母さんの笑顔が作り物だってことくらいわかっている。
私の家は母子家庭。
両親は私が小さい頃に離婚していて、私はお父さんの顔も覚えていない。
そんな中でもお母さんは女手一つで私を育ててくれた。
だけど私の子のせいで大変な思いをさせてしまった。
きっとお母さんは私のことを恨んでいるだろう。
「いってきます」
私も作り物の笑顔をお母さんに向け、家を出た。
季節はすっかり夏になり、眩しい太陽が私を照らす。
なんだかあいつに見つめられている時のようだ。