あれは、まだ高校最初の中間テストが終わって間もない頃だった。
「月島 華憐(つきしま かれん)です」
そう言ってニコリと微笑んだ彼女に僕の胸は高鳴った。僕の目を奪った彼女は僕の隣の席になった。
やっぱり、運命は予測できない。
まさか僕の初恋が"一目惚れ"から始まるなんて
__キンコンカーンコーン
チャイムがなり教室がガヤガヤとし始める。
「良也(りょうや)。パン買いに行こう〜」
吉田 幸人(よしだ ゆきと)がチャイムがなるや否や駆け寄ってきた。
幸人は犬みたいなやつだ。いい意味で。人懐っこくて誰とでもすぐに仲良くなれる。小さくて運動神経が良くて癒し系だ。
そんな幸人は僕に懐いてくれる。僕の唯一の友達だ。
「この問題解いてからな」
僕は、夢中になったらやめられないタチだ。
授業中に終わらなかった難問を解いてると幸人が不満そうに口を尖らせた。
「あーあ。パン売り切れちゃうよ〜。あ、じゃあ、僕が買ってくるね。いつものだよね?」
そう言うと気の早い幸人は僕の返事も待たずに飛び出していった。
それに続くかのように隣の席の彼女も出ていった。
あの日から__、僕が恋を始めてから3週間。
僕の恋は、まだ何にも進展していない。
彼女は不思議な人だ。
授業中は寝ているか本を読んでいるか、そして休み時間になると何処かへ行ってしまう。
僕にとってつかみどころのない風のような存在だ。