この物語は、まだ携帯電話もDVDプレーヤーも普及していなかったころ、九州の西部に位置する、ちょいと田舎町に純粋で純朴な(どこがだよ!)好青年がいた。

ここは、ある中学校の3年1組の教室
今は、五時間目の国語の授業中である。

「はーい、今日は、皆さんに短歌(川柳)を考えて発表してもらいます。」

生徒たちは、「え〜」とか「なんでぇ〜」とか不満の声を上げている。

「はーい、静かに、時間は10分!では始め!」

先生の後藤は生徒を無視して授業を進める。

生徒たちは、頭をボリボリ掻いたり鼻に鉛筆を挟んだり天井を眺めたりしながら短歌を考えている。

山下俊二(この物語の主人公)も頭を掻きながら短歌を考えている。

「いきなり短歌だなんて、何書けばいいんだよ」

シュンは、小さな声でブツブツ言ってる。

後藤先生は、時間を確認して静かに話し出した。

「はーい時間です。右側の前席から順番に発表してもらいます。」

生徒たちは順番に短歌を発表していった

「はーい、次は、山下」

「はい・・・・」

「うん、どうした」

「いや、あの・・・この句は」

「恥ずかしいのか、そんなのガラではないだろう」

生徒たちが見守る中シュンは意を決して発表した。


『朝おきて・隣にいる人・アンタだれ』


この、シュンの短歌に教室にいる全員が思考停止してしまった。

(?・?・?・?)

数秒後教室は騒然となった。

「あはははは」意味が分かり笑う者

「いやだぁ〜」と恥ずかしがる者

「バッカじゃないの」と罵倒する者

そして、シュンが思いを寄せる川中メグミが強烈に睨み付け冷やかに良く通る声で「変態!」と言った。

「うっ・・・」

シュンはうつむいた。

我に返った後藤先生はゆっくり話し出した。

「はーい、静かに、静かに、えー今の山下の句は先生個人としては最高に良い出来だと思う、だが学校の授業としては認める訳にはいかない、だから次からは普通にな山下」

「・・・はい」

シュンは椅子に腰を下ろした。

まだ、教室は少しざわついているが、後藤先生は授業を進めた。

「はい、次」

その日の放課後
シュンは仲間達と少し遊んで自宅に帰ろうと校門の方に歩いていた。

校門の前では、女子生徒が数人いて何やら話している。

「・・・・だよね・・・」

「それって・・・・・」

「・・・・・じゃない」

その中には川中メグミもいる。
シュンが校門の前に近づいた時メグミはシュンに気が付いた。

「バカ、スケベ、変態」

メグミは優しく睨み付けながらシュンに言い放つと仲間達と帰って行った。

「・・・・・」

シュンは涙を浮かべ空を見上げた。

「ビュ〜〜〜〜」

冷たい風が吹き抜ける。

秋も終わりを告げ様としていた。

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