優等生が恋をしたら。<短編>


彼の名前は橋田瑛翔(はしだ えいと)。








彼も私と同じ優等生だ。








でも彼は私と住む世界が少し違う。







私は平凡で地味な生活を送り続けているのに対し、
彼は友達が数人いて、輪の中に溶け込めるような
いわゆるムードメーカーみたいな存在だ。







眉、目、鼻、唇顔立ちが整っていて、
髪型も洒落ているような非の打ち所のない外見。
しかも身長だって175cmという高身長。






すなわちイケメンの部類。

告白は彼からだった。







何事も無かったかのように高校2年間過ごしていた
私だったが、今年進級してすぐのこと。








初めて同じクラスになった彼に、
突然放課後図書室で告白されたのだ。

今は放課後。








今日は図書室で勉強してから
一緒に帰るとのこともあって、
図書室で私と彼は勉強の最中。








カリカリ。








静寂な雰囲気に包まれている図書室で
シャーペンが走る音だけが聞こえる。







ふと彼を見ると長い睫毛に切れ長の2重の目が。








顔。整っているなあ。








そう感心しつつ、私は再びシャーペンを
走らせた。

そうこうしているうちに気づけば
図書室は閉館時刻を迎えていた。








今までのやりとりを見ていて気づいたかも
しれないが、私達はずっと会話を一言も
発していない。








本来の彼氏彼女であれば、沢山話すのだろう。
しかし私達は例外。







話すにしても朝や帰りにおはよう、おやすみとか。







今日の放課後だって、LIMEで彼から
今日放課後図書室で勉強しよう。と
来ただけだ。







少し話せただけでも私は充分なんだ。

下駄箱からローファーを取り出した私は、
彼と合流し、昇降口を出た。







『「…。」』







今の2人と距離感は人1人分といったところだ。







こういう状況がずっと続くものだから、
私はふと素朴な疑問が浮かぶのだ。







"なんで彼は私を選んだのだろうか"と。

お互い名前だって名字呼び。
私が橋田君と呼べば向こうは倉島。







彼は外見が良いのだから、周りに女なんて
どこにでもいる。







なのになんで私なのだろうかと。







私は彼に初めて声を掛けてみようと思う。

上を見上げるとオレンジに青を少し混ぜたような
秋色の空。




すぅーーーーー。








深呼吸をし、覚悟を決めた私は
勇気を出して声をかける。








『ね、ねぇ。』







「ん?」






今まで話しかけられなかったからか
少し驚いた表情をして歩いていた
足を止める橋田君。







『なんで私なの…?』



聞いた…聞いちゃった……








今更ながら答えを知るのに少し怖くなった私は
顔を下に向けて答えを待った。








「なんでって…そりゃあ好きだからだろ。」







『は……』

ストレートな回答に私は思わず間抜けな声を
出してしまった。








「だって好きでもない女と付き合わねぇだろ。」







ご、ごもっともです。







というかそれなら…







『じゃあなんで恋人ぽいことしないの…?』







すかさず私は聞いた。