変な話をされていなかったかと不安になる。

入学早々それは嫌だ。


「ふふ、不安に思わなくても大丈夫よ。あまり深く内容までは聞いてなかったけれど、決して悪いようには言ってなかったと思うわ」


私の不安が表情から伝わったのか、彼女は安心させるように優しく微笑んで言った。


「あたし、根本咲(ねもと さき)。よかったら仲良くしようよ。咲って呼んで」

「うん、ありがとう。私は新垣美玲衣。よろしくね!美玲衣でいいよ」


咲ちゃんは「ありがとっ!」そう笑ってさらに顔を近づけてきた。


「でね!美玲衣、この辺の中学出身じゃないなら知らないと思うんだけど、美玲衣の隣の席になってた人ってね、この辺りじゃすごく有名な男子で、その名前が……」


ガラララ


そう小声で耳打ちしてくれた咲ちゃんの言葉を遮るように、その瞬間、勢いよく開けられた教室のドア。


「あっ」

「え?」


「あ、あの人だよ!美玲衣の隣の席!元篠山中出身で、とにかくイケメンで何でもできることで有名な……七海遥(ななみ はる)くん!」



……。



私はその名前を聞いた途端、

言葉を失った。