あ、そういえば隣の席の子の名前、見忘れちゃった。
沙梨奈が変なこと言うからだ。
なかなか来ないみたいだけど、もしかしてお休みなのかな?
私は空席のままの隣の机を何気なく見つめて、そんなことを考えていた。
そのとき。
「ねえねえっ」
後ろの席から肩をトントンと叩かれて私は振り返る。
「ん?」
「初めまして!あたし、この近くの篠山中出身だけどどこの中学?」
声をかけてきたのは、髪を後ろの高い位置でポニーテールに結っていた、小顔で細身の女の子。
沙梨奈は中学卒業後にミルクティーブラウンに髪を染めてたけど、彼女の場合はもっと明るめのイエローアッシュの髪色だった。
「私、この辺りの中学じゃないんだ」
「えっそうなの?あれ?でも今日、校門の辺りで同じ1年の男子たちがあなたのこと見て噂してたからてっきりこの辺の子かと思った」
「えっ!噂??私のことを?」
そんな声聞こえたかな……。
確かに少し見られていたような気はしないでもないんだけど。