それぞれバディを組んだ。どう見ても、俺が一番経験が浅くて勇太と組まされる事になった。嫌だが仕方ない。勇太も不服そうだ。

 潜るのは、ハワイ以来だから三ヶ月ぶりだろうか?


 日の光りが海の底まで届き、魚の群れが鮮やかに見える。

 海の中の神秘的な空間に興奮と癒しが混ざりあう。綺麗な空間に、手が差し出された。奏海が何かを指さしている。マンタだろうか? 俺は、彼女の指さす大きな影を見つめた。

 俺は、言葉の無いこの世界の中で、彼女の気持を感じる事が出来る気がした。思い上がりなのかもしれないが、彼女が俺に伝えたい海がここにあると思った。

 知らず知らずに、俺に何かを教えてくれて、俺を変えていく彼女の指さす先をずっと一緒に見て行きたいと思った。


 岸へ向かう途中、船の上で潮風にあたり海を眺める。

 夕方、波も穏やかな海は、キラキラと沈む為に色を変え始めた光りに照らされてた。


「バーベキューやろう!」

 突然のおやじさんの声に、俺以外の皆は歓声をあげた。

 俺はまだ、この人達の中間に入り切れていないのは自分でも分かっている。一緒に喜ぶのは、いくらなんでも図々しいだろう……


「海里は予定でもあるのか?」

 勇太が俺をチラリと見て言った。


「いや、そういう訳じゃ……」


「だったら、食ってけ!」

 おやじさんは、船を操縦する先に視線を向けたまま言った。


「やった! パパ、花火も買って来ていい?」

 奏海が、嬉しそうに両手を広げた。

 俺には奏海の発言が意外で、思わず奏海を見てしまった。

 俺が居ても嫌じゃないんだ…… 
 そう思うと胸の奥がくすぐったくなり、俺は視線を海に戻した。