店に入るとふわっといい匂がした。
 さほど大きくない店だが、綺麗にされており、白とお青でまとめられたインテリアが、俺をほっとさせた。

 それに、まだオープンしたばかりらしくて、メッセージ付きのお祝いの花がいくつも飾られていた。

「さあ、これに着替えて」

 梨夏さんが、綺麗に畳まれたTシャツを俺の前に出した。それで、自分がラッシュガードと海水パンツのままだった事に気が付いた。


「すみません……」

 俺は、Tシャツを受け取った。お礼など言える自分に驚いた。多分、横で見ていた後輩も同じ事を思ったようで、あんぐりと口を開けていた。


 着替えに通された部屋は、ダイビング用のウエットスーツが掛けられ、様々な海の道具が棚一杯に並んでいた。
 ダイブショップと併用された店だという事が分かった。あちらこちらに飾られた海の写真に目をやった俺は、いつの間にか見入ってしまっていた。

 心の奥の方で、感じたことのない興奮が湧きあがってくるのが分かった。

 ガタンと、何かを置く音に我に返った。


「早く行け」

 あの、おっさんだ。

「ここ、ダイブショップですか?」


「ああ…… マリンスポーツ全般だがな」


「すげ―っ」

 俺は、あらためて店を見回し声を漏らしてしまった。


「アホか」

 おっさんは、呆れたように言った