「おい、しっかりしろ」

 ペタペタと頬を叩かれる感触に、うっすらと目を開けた。

 そこには、知らないおっさんの顔があった。
 誰なんだ? と、思った途端口から海水を吐き出した。

「大丈夫か?」


「……」

 俺は、肯きながら体を起した。


「おい、お前まさか酔ってんじゃないだろうな?」

 おっさんの、険しい声にびくっとなった。

 目に入ったおっさんの拳が握られるのが分り、殴られると思ったおれは歯を食いしばって目を瞑った。


『パッチン―ッ』 


 えっ?

 拳じゃない…… 平手?

 
 恐る恐る目を開けると、そこには、目に涙を浮かべた彼女が立っていた。