「へえ―。ここが、海里さんがよく来るお店なんだ。かわいい」

海里さんの肩の後ろから、ひょっこりと出した顔。

クリッとした目に、ほわーっとした表情。

背も低くて、これが一般的に可愛いと言われる人なんだと思った。



 海里さんはカウンターから新聞を手にし、皆のテーブルに腰を下ろした。

その横に、当たり前のように、そのクリッとした目が座った。


「おお! 海里さんの彼女ですか?」


常連客の一人が言った。


私の胸が痛いくらいにズキンと音をた。

 手早にお皿を並べながら、海里さんの答えが怖くて顔を上げられない。


 だけど、答えたのは海里さんじゃなくて、

「ええ! 恥ずかしい、まだですよね?」

 クリッととした目が、チラリと上目使いに海里さんを見た。


 まだって、どういう事? 


 胸がドキドキして治まらない。


 海里さんは表情を変えず、新聞を広げたまま言った。


「大内さん、朝食は?」

「えっ? 海里さん、ここで食べるんですか? 私、ホテルに戻ってから、クラブラウンジで頂きます。こういう所で食べた事ないんで……」


 こういう所って、どういう意味じゃ! 

 なんだか、ドキドキがイライラに変わってくる感情を抑え、自慢のモーニングをテーブルに置いた。


「旨そう」

 ユウちゃんが、大げさに言った。

 気を使っているのが、逆にいらつく。


 海里さんの前にも、モーニングセットの乗ったトレーを置いた。


「あっ、私は結構ですので……」

 クリッとした目が言った。