海里さんが来ない朝が続き、約束の週末になった。


いつものように、テラスへ出ると海へと目を向けた。

朝日の中の黒い人影。

海里さん帰って来たんだ、と思った瞬間に胸の奥がドクドクと高鳴った。

 今朝のモーニングセットはウインナーを付けようかと考えていると、海里さんがサーフボードを抱え岸へと上がってきた。



 その姿に、キッチンへ入ろうと向きをかえようとしたときだ。


 えっ?


 海里さんに駆け寄るように、長い髪にふわりとしたワンピース姿が目に入った。


 誰? 


 体が固まってしまった私の胸の高鳴りは、一気に嫌な音に変わった。



 何故、こんなにもわもわするのだろう。

 いつもと変わらない朝だったはず。

 何がこんなに気持ちをかき乱すのだろう。



 キッチンに入ると水道の蛇口を思いっ切りひねり、勢いよく出た水でレタスを洗う。

 思いっきり冷蔵庫を開け、ウインナーを取り出した。

 フライパンを熱し、油をひく。

 ウインナーを並べた横に、卵を割り入れる。

 今日は、目玉焼きとトーストに野菜スープ。



 店の扉が開き、ガヤガヤと人が入って来た。


「かなちゃん、おはよう。いつものね」


 ユウちゃんを先頭に皆の注文の声が上がる。


 そう、いつもの…… 

 いつもと何も変わってなんかいない…… 

 いつものようにしていればいい……


「はい」

 笑顔で答える。


 そして、最後に入ってきた海里さんと目が合った。


「海里さん、おはようございまず」


 いつものように、挨拶したのに…