残り十分、私は緊張しっぱなしで接客をすることになった。




「椿、見事にお水溢してたね」

車の中で笑う海さん。

海さんにカッコイイところを見せたかったのに、緊張しすぎて海さんの目の前でお水を溢すという失敗をしてしまったのだ。


「笑うなんてひどいです……」

私、本気で凹んでるのに……。


ぽんぽん。


落ち込んでいたら、頭の上に大きな手の平。
運転をしながら、左手で私の頭をぽんぽんと撫でている海さん。


「ウソウソ、椿、頑張ってた」

好きな人に褒められると、ホントに嬉しい。

今まで凹んでたのに、そんなことすっかりどこかへ飛んでいったから。