洸君は舌打ちをすると、

「椿に変なことすんじゃねーぞ!」

と言って、店の奥へと向かって行った。


「変なことって椿が仕事中なのに出来るわけないのにね」

クスクス笑う海さんを見ながら疑いの眼差しを向けてしまう私。
海さんなら変なことしそうだと思ってしまったから。

すると私へと顔を向ける海さん。


「本多《・・》さん、案内してくれますか?」

実は私、結婚の時に海さんに言われた通り、旧姓を名乗っている。

海さんは御客様。
真面目にお仕事しよう!

「か、畏まりました!お席にご案内します!」

私は笑顔と手でジェスチャー。
そして海さんに背を向けて誘導してフロアを緊張しながら歩く。


「手と足、同時に出てるよ」

後ろからクスクス笑う声。

緊張しすぎて同時に出ていたようだ。