数秒前まで目の前の椿は、俺を見ながら「大丈夫」と笑っていた。

だが今は俺の腕の中に居るというのに、頬を染めることもなく、動くことすらもしない。


「椿?椿……?」

呼びかけても反応しない。

充電が切れたおもちゃみたいにピクリとも反応してくれない。

椿はお腹に刺さっているナイフを両手で強く握り締めながら。


ここまでは俺も少しは冷静に状況を把握しようとした。

でも次の瞬間、一瞬で錯乱した。


痛々しく突き刺さってる椿のお腹から真っ白な椿のブラウスに、真っ赤な血がどんどん滲み始めたから。


息が止まり、心臓が止まったような感覚。