一瞬で心臓すらも凍りつかせる程の鋭さと光沢を持っているナイフがあるから。

全身には恐怖の戦慄。


海さん!


焦ったせいで手から携帯が落ちていったが、私は構わずに二人の元に駆け出した。

海さんにナイフを向けて駆け出す弥生さんを止めるために。


ダメ!




ザシュっと鈍い音と、腹部には感じたことの無い強烈な痛みが走る。


こういう時って人って火事場の馬鹿力を発揮できるんだなって思った。
だってドンくさい私がコケずに走りきれたから。なんて考えてしまうほど心の中は変に穏やか。

目の前で目を見開いている彼女を何故か冷静に見れているし。