『じゃあお母さん達、行って来るね』



『ちゃんとお婆ちゃんの言うこと聞くんだよ』


そう言って普段とは違う、ドレスアップした両親。


季節は春の暖かな陽気の中、友人の結婚式に向かう準備をしていた。



私はと言うと、直前で軽い熱が出てしまい、大事をとってお婆ちゃんと留守番をすることになっていた。




『いってらっしゃい!ちゃんと言うこと聞くからね!』



そう言って、まだ5歳だった私は二人に抱きついた。



私を見て心配そうに微笑む両親。



それが最後に見た二人の姿だった。









“ キキイィーーーーーー!!!! ”






しばらくすると近くで物凄いブレーキ音と共に物が激しくぶつかる音がした。



『っ!!まさか!!!!』




そう言って私とおままごとを始めたお婆ちゃんは、顔色を変えて外に飛び出した。



私もただならぬ雰囲気を感じ、オロオロとお婆ちゃんの後について行った。





『早く!!救急車呼んでください!!!』

『っっ日向!!おうち入ってなさい!』




そこには幼い私にもわかる程、絶望的な状況の両親と、大量の血、ぐちゃぐちゃなった車、靴も履かず二人に駆け寄る祖母の姿があった。





『お……お母さん?…お母さん!!お父さん!!』




家になんていられなかった。



今まさに目の前で起こっていることが夢なんじゃないか。



まだ死については漠然とした認識ではあったが、それでもそこはかとなく両親がいなくなるという事を感じた。






そのうち、救急車のサイレンが聞こえて、祖母は救急車に乗り、私は近所のおばさんの家に預けられた。