「佐々木さん、ごめんなさい。私、行かないと」
「どうしても?」

…どうしても?と、言われても。

と、思った瞬間、誰かの腕の中にすっぽり収まってしまった。

私は驚いていて見上げる、と。

「社長」
「うちの秘書の相手をしてくださってありがとうございます、西園寺専務」

…え?…え?!

今、西園寺専務って言った?

私には、佐々木だって、言ったのに。

「言わないでくださいよ、笠原社長。もう少し仲良くなったら打ち明けようと思っていたのに」

そう言って、佐々木、改め、西園寺悠翔。

「秘密にしているのは、社内で仕事がしにくいからであって、私の秘書に、秘密にする必要はないんですよ。西園寺専務、私の秘書は、貴方が専務だろうが、社長だろうが、一般社員だろうが、分け隔てなく接しますから」

そう言いながらも、腕の中から、解放してくれる様子はない。

それを見た、悠翔は、ニッコリ微笑んだ。

「有坂さんは、笠原社長のモノだと言いたいんですね?」

「えぇそうです。ですから、今後は、彼女に触れることは禁止します」

そう言って、社長もニッコリ微笑んだ。