次の日の朝。光に一緒に出社出来ない事を連絡して、仕事に向かった。

今日は、社長は取引先を回ることになっていて、私は留守番だ。

雑用や電話受付、忙しく働いていた。

…一方、社長も、順番に取引先を回り、最後に光の会社に来ていた。

話が終わり、社を出たところで、呼び止められた。

「笠原社長!」

その言葉に振り返った社長は、怪訝な顔をする。

「…何か?」

社長を呼び止めたのは、光だった。

「…結愛の事です」
「…」

「貴方は本気で結愛の事を愛していますか?」
「勿論ですが」

「結婚を考えるくらい?」
「…それを、アンタに言う義理はない」

…二人の間に、ピリピリとした空気が流れる。

「ふん、そんな事も答えられないような軽い気持ちなら、結愛は貴方にはやらない。結愛は私のモノですから」

「何を寝ぼけた事を」

「そっくりそのまま返しますよ」

そう言い捨てると、光は踵を返し、社の中に戻っていった。

…やはり、光は結愛の事を。

社長は、右手を握りしめた。

…その日を境に、私と社長の関係がギクシャクし始める。

「良樹さんに、光のことを、そんなに悪く言われる筋合いはない!」

良樹の部屋のリビングで、ケンカになった。

「あぁ、そうか、わかったよ。もう、何も言わない。結愛が好きなようにすればいい」

「良樹さんのバカ!」

私は泣きながら、家を飛び出した。