悠真の言葉が丁度止まってしばらくした時、ピンポーンとやけに軽快な音が部屋中に響きわたる。だけど悠真はそのインターフォンの音に反応する事はなくそのまま話しを続ける。



「熱がある時にこんな話ししてごめんね、でも二人きりで話せる時ってなかなか無かったからさ」



「うぅん、悠真…ありがとう。悠真は凄いね、お兄ちゃんみたい。一つしか歳変わらないのに」



「お兄ちゃんかぁ、確かに実際妹いるしね。俺にとったら莉愛ちゃんは可愛い妹なのかも」



クスッと楽しそうに笑いながら目を細めた悠真だけど、その後に何度も大きな音を立ててインターフォンが鳴り出したのを聞くと「しつこいな」と珍しく低い声を出して呆れたように立ち上がる。



「莉愛ちゃん」


部屋を出て行こうとした悠真は、一度足を止めるとドアにかけていた手を離してこちらへとゆっくり振り返る。



「君は優しい子だ、でも時には自分の幸せを一番に考えたって良いんだよ。俺はこれから先もずっと莉愛ちゃんの味方だから」



「……悠真」



「インターフォンうるさいから出てくるね」



部屋から出て行った悠真の背中を見送りながら思う。



悠真は私に幸せになっても良いんだと言った。だけど今まで…そんな事考えもしなかった。


幸せで満ち溢れている自分を想像もしなかった。


もしも、自分がそんな風になれるんだとしたら…それは一体どんな幸せの形をしているんだろう。どんな景色をしているんだろう。どんな…感覚に包まれるんだろう。