「分からないです、でも私は別にあなたの事を嫌いなわけじゃない。だから道端であったら知り合いとして挨拶くらいするかも」
「ははっ、それは嬉しいね」
「そうは見えませんけど」
「そんな事ない、これでも喜んでるよ」
車が滑らかに止まり道路端へと寄せられる。
コンクリートと車へ雨雫が強く刺激する音が響いた。
「それじゃあ、お世話になりました」
車内で軽く頭を下げて、新が持って来てくれた紙袋を手にし外へ出ようとドアノブを握った時
「……どうしたんですか…?」
握られた片手。紙袋を持った手が新によって掴まれた。
「いや…」
「……?」
手を掴む新の方へ顔を向けると、新はジッと私を見つめ少しした後大きな溜息を吐き出すと
「あの女には気を付けろ」
「あの女?」
「朱音だ。アイツには気を付けろ」