「とにかく彼女は俺が送る」


「しかし!新さん」


「何だ、俺の決定に意見があるなら聞くぞ」



凄んだ声で低音を出すと、ナツメと呼ばれた彼は新へ前のめりになっていた身体を元に戻し「いえ、何でもありません」と深く頭を下げた。



「カケルもそれで問題ないな」


「…はい」



優しさと冷たさが交互する。この二人には心を開いていそうなのに…でもやっばりどこか一線を引いていて…新というこの目の前の男はどこか掴み所がない。


不思議な男だ……。



「送って行く」



新はそう言って私を見下ろすと、タレ目がちな瞳を細めて優しげに声を出した。



さっきはまだ帰さないと言っていたのに、結局は送ってくれるらしい。


やはり優しいんだか冷たいんだか不明だ。



強いて言うならば、きっと彼は誰の事も懐には入れずそして距離を取るように笑顔を作っているのかもしれない。



この一線を越えないように。誰の事も真の自分に近付かせないように。