険悪ムードから一気に気が抜けたような気持ちになって、思わず唖然と立ち尽くした。
それにしても…どうしてここに女の子が…
そんな私の疑問を打ち消すようにしてカケルは私に満面の笑みを見せると。
「私、黒雅の幹部なんだ。よろしくね」
華奢な身体に綺麗な肌、誰もが二度見してしまいそうなほどの可愛いさにとても似合った髪色。
……この子が…黒雅の幹部……?
それは思っても見なかったような発言で、そして私をとても戸惑わせた。
女の子が暴走族のメンバーとして幹部に付いているなんて、このての話が良く分からない私でもそれは驚くべき事実で、思わず困惑してしまう。
「総長、莉愛ちゃんは私が送っても良いですか?」
カケルは私から一歩離れると、新に向かって目尻を下げるようにして可愛らしく微笑んだ。
だけれど、新はそれに頬を染めるどころか不機嫌そうに眉を寄せる。
「おいカケル、何勝手な事言ってるんだ」
黒縁眼鏡がそれにすぐさま突っかかるようにして低い声を出した。
「なっちゃんは黙ってて、私は総長にお願いしてるの」
「良いわけないだろ、そもそも帰すなんて言ってないじゃないか」