「莉愛ちゃんは梓が好きで、梓も莉愛ちゃんを特別だと思ってる」



静かにゆっくりと話す朱音さんの声は、やけに鮮明に私の耳へと届いて…そして…



「でもごめんね、梓は私のだから。梓にとっての一番は私、それがこの先変わる事はないよ」



耳の奥でキーンっと耳鳴りがする。分かっていた事だけれど…そう直接言われるととても苦痛で仕方なかった。



心の何処からか…ガラガラとまるで音を立てて何かが落ちていく。



「梓が私じゃなくて、莉愛ちゃんを選ぶ日なんて来ない」



手先から足の先まで一気に冷めていくような感覚がして、自分で分かっていたはずなのに、心の何処かではまだ期待している自分がいたのかもしれない。



「…わかって…ます」


「そっか、それならよかった。梓は優しいから莉愛ちゃんに期待を持たせたらいけないと思って」



まるで私の心を読んでるみたいに微笑んだ朱音さんは、艶のある髪を耳にかけて目を細めた。



「莉愛ちゃんなら、分かってくれるって思ってた」