鏡に映る自分の顔は酷いもので、目は赤く腫れぼったくなっている。
「……酷い顔」
ため息も涙も、もう出ない。
きっとここ数日で出し切ったんだ。
これで良い…もう梓を困らせたくない。
梓が私を大事に思ってくれてるって分かっただけで、私は幸せだ。
ポケットに入れていたタオルで顔を拭き、外へ出ようとしたところであちら側から丁度ドアが開いた。
ヤバイ、この顔を誰かに見られたらきっと心配される…
だけどそのドアから入ってきた人はシルバーナイトの誰でもなくて…今最も会いづらい人……
そう、朱音さんだった。
「莉愛ちゃん、大丈夫?」
その表情はいつもの穏やかで可愛らしい表情とは少し違いどこか冷た気で……
口にしている言葉は私を心配している言葉なのに…冷めたように私を見つめる。
「あ、はい…」
タオルで口元を押さえるようにしてそう頷けば、朱音さんは私の方へと一歩近付いてドアを閉めた。
「莉愛ちゃんは、梓が好きなのね」
「え……」
「さっきの部屋での二人の会話聞いちゃったの」