私は瞳を強く閉じると、その場から思い切り走り出した。



女の子は扉の中から勢い良く出て来た私に、ものすごく驚いていたけれどそんなの無視してエレベーターへと駆け込んだ。




エレベーターの扉が閉まったころ、私の目の前が真っ暗になっていく。



もう限界だと……。



初めての恋


始まることのなかった恋



私は結局自分を変える事なんて出来なかった。
変わったなんて錯覚を起こしていた。



逃げる。
ただひたすらにこの悲しみから逃げたかった。



梓の家から一心不乱で走った。駅前に着く頃にはノドから血の味がするほどで、彼らといる時みたいに人混みは私を避けてはくれない。



ただ、誰もがこんな所で走っている私を不思議そうに見ていた。


街にはこんなにもたくさんの人達がいるのに、私は一人きりだ。この中の人達に紛れる事すら出来ない。



「おいッ!こんな所で何してんだよ!!」



いきなり引かれた右腕は、とても強い力で引き寄せられ…走っていたはずの私の足がピタリと止まる。



最近、誰かに腕を引かれる事がやけに多いな。



止まっていたはずの涙が溢れる。



だって……それは…目の前にいる琉聖が私なんかよりもずっと…泣きそうな顔をしていたから。



私の腕を掴んだのは、息を切らし汗をにじませた琉聖だった。