ピンポーンっと、今の雰囲気には似つかわしくない軽快な音が部屋中に響き渡った。



一瞬、また佑衣達が乱入してくるのかと思ったけれど、どうやらそれは違くて。



中から話し声がしたはずなのに、しばらくしてもこちらの返答がなかったからか。



コンコンッと数回ノックされた扉。


そして……



「梓、いるの?」




溢れ出していた涙が一瞬にして引っ込んだ。




高めのソプラノのような声。
どこか上品で気品あふれるその喋り方はあの日を思い出させる。



胸が苦しいなんて言葉じゃ表せないくらい辛かった。


自分をコントロール出来なくなるほど惨めで仕方なかった。



「梓…ごめん…」



梓の身体を振り払って急いで玄関へと向かった。
乱暴に靴を履くと、その鉛のように重たい腕を上げて扉を開く。



「莉愛ッ!!」



後ろでは梓が叫んでる声が聞こえる。



そして扉を開けた先に立っていたのは、もちろん佑衣達じゃない。



水色のワンピースに、白のストールを巻いたあの時の女の子。



朱音と呼ばれていたあの子。