いつのまにか、頬に冷たい何かがつたった。
それが涙だと分かるのにそんなに時間はかからなくて……



そんな顔を見られまいと、勢い良くベッドから駆け下りて走り出す。



幸い昨日いきなり倉庫から来たから鞄は持って来てない。このまま出て行くには好都合だ。



だけど、廊下に出た所で後ろから力強く腕を掴まれた。




「待てよ!」



その拍子に軽く後ろへと戻されて、私の涙ぐむ顔があらわになる。



その瞬間、梓の顔が信じられないくらい悲しげに歪んで私の胸に棘を残す。




「離して」



「離さない」



「何でよ…」



「お前を離したくねェからだ」



「やめて、こんな事されたら…私梓のこと欲しくなる…」



濡れるような漆黒の瞳


深く無限に煌めく白銀



私はあなたが欲しい。

欲しくて欲しくてたまらないんだよ……



「莉愛、俺はお前がッ…」



掴まれた腕が熱を持つ。馬鹿みたいに鼓動は早くて

梓が反対の手で私の涙をすくい何か言おうとしたその瞬間……