「いいの…?」
「いい」
「でも配達かもよ」
梓から少しだけ顔を離すけれど、やっぱり梓は私を引き寄せ力強く抱きしめると
「行くな、ここにいろ」
そんな甘い言葉を私に落とした。
そんな事を言われたら…さっきまで考えていた事なんて、一気にどうでもよくなって…再び梓の温もりへと意識が戻っていく。
いつのまにかつぶっていた梓の瞼に合わせるようにして、私もゆっくりと瞳を閉じた。
梓の温もりと…抱きしめられているほんの少しの身体への重みと…爽やかな柑橘の香りが心地いい。
こんな時間がずっと続けば良いのに…そう思わずにはいられない。
特に会話をしてるわけでもなく、何かをしてるわけでもない。
それでもそれが凄く心地良くて…幸せで安心できて……
こんな気持ちになるのは初めてだった。