「何だよ」
不機嫌そうな顔とは違い、どこか優しげな声にもう一度小さな笑みが漏れる。
「ふふっ、何でもないよ」
最後に乾き切った髪に一度触れてからドライヤーのスイッチを切っていると、
グイッといきなり強く引かれた私の腕。
その勢いで持っていたドライヤーが手から滑り落ちる。
あ、せっかく買ってくれたのに…
だけれどそんな事を思っていられたのもほんの一瞬で、
「わぁっ!」
いつのまにかベッドへと倒れ込んでいた私の身体。反転した視界が定まった時には思わず言葉を失った。
目の前には梓
梓はそんな私を覆いかぶさるようにして真上から見下ろしている。
さっきまで私が見下ろしていたはずなのに…いつのまにか逆転している。それどころか覆いかぶさられている……
乾きたての白銀の髪がサラサラと揺れていて、細められた瞳はやはり信じられないほど魅力的だ。
梓って本当整った顔してるな…
こんな状況にもかかわらず、いつのまにかそんな事を考えていて…
「これ、好き」
自然とそう口から溢れたかと思うと、無意識のうちにそういって梓の目元にそっと一本の指先を触れさせた。