「じゃあ、お前がやって」
優しく包まれていた手にギュッと力がこもる。
「……え…」
「乾かして」
そう言われて今更気がつく。
そう言えば…前回はドライヤーがなかったはず。それなのにさっき私がお風呂を借りた時には脱衣所にドライヤーがあった。
「……うん」
私は脱衣所へと向かい、鏡の前に置かれていたピンク色のドライヤーを手に取ると寝室へと戻った。
私が部屋へと戻ると、それに合わせるようにして梓の視線が私に向く。
私はさきほどと同じ場所に立つと、ベッドサイドにある穴へとコンセントをさした。
いつも見上げられているせいか、梓を見下ろすのは何だか変な気分だ。
カチっと小さな音を出しスイッチを押すと、ゆったりと生暖かい風が吹き出して…それを梓の綺麗な白銀の髪へとあてる。
思ったよりもサラサラな彼の髪と、自分から香るシャンプーの香りがやけにリンクしてトクントクンと心臓が動き出した。
「ドライヤー、買ったの?」
私にされるがまま髪をいじられてる梓は、つぶっていた目をゆっくりと開くと視線だけを私へとよこす。
「あぁ、お前家に呼ぶつもりだったから」
……私のために…買ってくれたの?
だからピンク色なの…?
想定外の言葉に、一瞬同様した私は思わず手を止めてしまっていたけれど…すぐさま平然と再びドライヤーを握り直す。
手に持っていたピンクのドライヤーを見つめながら、梓が私のために買ってくれた嬉しさと。この女子が好きそうなピンク色のドライヤーを梓が一体どんな顔してレジに並んだのかと思うと何だか少しだけ可笑しくて
フッと声を出して笑えば、梓は怪訝そうに眉を歪ませた。