そんな梓の言葉を聞いて、あの日いつのまにか寝てしまっていた私は…朝目が覚めると目の前にぐっすりと眠ている梓が居たことを思い出す。



そういえば、あの日は私もやけに眠れたっけ…。




それにしても梓も普段眠りが浅かったなんて、知りもしなかった。まるで自分を見ているみたいだ。




「だからお前がいないと困る」




まさかの梓からの言葉に、身体の力がフッと抜けてそのまま腕を引かれて再び歩き始めた。




いないと困る




それが一体、梓にとってどんなつもりで言った言葉なのか…そんなの分からないけれど…だけど正直笑みがこぼれてしまう。



「入れよ」



私が心配していた出来事は起こる事なく、梓の家の前には誰もいなかった。



「お邪魔します…」




ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、次は梓と二人きりで家にいるという緊張感が私を襲う。



靴を揃へて部屋へと入れば、一気にふわりと鼻に届くのは梓の香り。爽やかな柑橘系の香り。