胸の中に何か黒い塊のような物がモヤモヤと溢れ出してくる。



私、今一体どんな顔をしてるんだろう……
酷い顔してないといいな…



少しうつむきかけていた顔を梓の方へと向けると、ぶつかり合った視線の後、梓は少しばかり眉を歪ませてから小さな溜め息を吐き出した。



「普段、家に人入れねェんだよ」



自分だけの…テリトリーって事だろうか……
え、でもそれじゃあ今のこの状況は…




「誰にも邪魔されたくない場所ってあんだろ。だから来たことあるのもごく限られた人間だけだ」



「……え…でも、私…」



「悠真と琉聖と佑衣」



「…………」



「あと、お前」



それはつまり間接的に彼女は家の中へ入った事が無いってことで



胸の奥の黒くてドロドロとした感情がまるで浄化されたみたいに、あっという間に私を照らし明るめていく。



それと同時に、梓にとって私が限られた人間の一人である事が凄く嬉しかった。



でも……もしかしたら、あの日初めてここへ来た日…梓は私をここへ入れたく無かったんじゃないだろうか…なんて考えも浮かんでくる。



だけど続けるようにして話し出した梓の言葉は、私の想像をはるかに超えてくるような言葉で




「普段眠り浅いんだよ、けどあの日お前と一緒にいたらやけに寝れた」