「…逃げないように?」



こんな事をされたら、ただでさえ期待してしまいそうになるのに……




切れ長な瞳で私を見下ろしているそんな彼から、視線を外す事なんて出来ない。




「お前が倉庫に来ねェから、気になんだろうが」




ドクンっとやけに大きく音を立てて鳴り出した心臓は、まるで走った後みたいにドキドキとしていて…梓が言った言葉への嬉しさと切なさと…ほんの少しの苦しさが私の身体中を支配していく。



好きだと気が付いた瞬間、こんな想いをするくらいなら…恋なんてしたくないと…そう思ってしまう自分もいて、だけれどやっぱり彼から目をそらす事も離れる事も私には出来なくて…



今目の前に梓がいてくれる事が



こうやって私の存在を何処かで必要としてくれる事が




たまらなく嬉しくて幸せで……




「だから今日は、お前のこと拘束しとく」




立ち尽くしていた私の右手を梓は優しく包み込むと、その腕を力強くグンッと引っ張り歩き出した。