だけれど、そんな私の疑問なんて気にしていないかのように梓は私の腕を離すとさっさと歩き出した。



その進む先は間違いなく梓のあのオシャレマンションへと繋がるエントランス。



慌てた私は急いで梓の背中に向かって少しだけ大きな声を出す。




「行くってどこに…?」



いや、ここまで来たらもはや聞かなくても分かる。
何処に行くかは分かる……
分かるんだけれども…私が分からないのは、何故そこに行くのかということ。



振り返った先の梓は、やっぱり何処からどう見ても気だるげで…わざわざそんな事言わないでも分かれよとでも言いたげに私を見下ろしてくる。



梓の切れ長な瞳に私が写っているのが見える。
それだけでドキドキしてしまう私は重症なのかもしれない。




「俺の家」



うん、だから何で…?



「…何で梓の家に行くの?」




月の光で反射した白銀の髪が綺麗だ。

久しぶりに見た梓は、立っているだけでやっぱり独特なオーラがあって……




何度見ても目元のホクロがやけに色っぽい。




「お前が逃げねェように」