「この子たちは何もしてないよ!ちょっと、話してて喧嘩になっちゃっただけだから。だから、もう大丈夫だから、中に入ろう?」





すると恭哉君はチラリと私へ目を向ける。


その目は酷く冷たく、何か言いたげだった。





私はそんな恭哉君に懇願するような眼差しを向ける。





「…分かった」





恭哉君は少しわざとらしく大きなため息をつくと、ゆっくりと歩き出した。





そして、





「2度と恵那に近づくなよ」





通り際に女の子たちにそう告げ、私たちはこの場を後にした。





そして校舎へ入った途端、恭哉君は自分のブレザーを脱ぎ、何も言わずパサッと私に被せたのだった。





「あっ、ありがとう…」





恭哉君も寒いはずなのに。


私のこと、気遣ってくれたのかな。





ブレザーから香る、恭哉君の香水の匂いに鼻腔をくすぐられながら、ギュッとブレザーを自分の肩に纏わせた。





「恭哉君、どこ向かってるの?」





2人とも雨のせいで全身ずぶぬれだ。


私なんて、地面に倒れたせいで泥だらけにもなってるし。