「ゆきちゃーん!今日から院内学級行けるんだって?!」


私の病室に大きな声で話しながら入ってきたのは私より4つ下の女の子。
前浜愛(まえはま あい)ちゃん。愛ちゃんは私の隣の病室にいて私が入院してからすぐぐらいの時期に転院してきて入院自体はもう2年なんだって。同じ院内学級に通ってる子の1人でもあるの。


「うん!もう行っていいって!愛ちゃん、ちゃんと勉強してた〜?」


「してたよっ!ちゃんとゆきちゃんいなくても頑張ってたもん!」


「それならよかったけどさ!早く行きたいなぁ。」


私のいる病院は少し変わってて院内学級だけど1日中はないの。病室でする子もいるからその子たちの時間も確保するために院内学級の時間は午後2時から午後4時までの2時間。50分授業が2回あるの。っていってもほぼ自己学習だけどね。


それでも教室には今は5人の中学生がいて先生がいて休み時間にはおしゃべりして。すっごく充実した時間を過ごせて私はその時間が大好きなんだ。

教室は2つの部屋がつながってる感じで窓でお互いが見えてたまに小中で合同ですることもあって本当に楽しいんだよ!


って院内学級の説明はよくて…。


「愛ちゃん、なんでここにいるの?さっきゆいさん検温に行ってたよね?」


「あ、えっと…」


ガラッ


「愛ちゃーん。ほら採血するよ。もう充分お話できたでしょ?」



なるほど。愛ちゃんはこれから逃げてきた訳か。


「やだ!愛しないの!おとといしたもん!やだ!」



「愛ちゃん?がんばろ?ね?」



「やだ!もう刺すとこないの!」


そう。これが小児病棟。毎朝誰かしらは採血がある。検査が大事なのはみんなわかってる。だけどみんな腕には針の跡が痛々しいほどに残っててこうやって泣いて逃げる子も少なくない。わかってはいても嫌で嫌で仕方がなくなるんだよね。



「…。愛ちゃん、私と一緒に受けよっか?ゆいさん、私今日採血だったよね?さっきは先生きちゃって忘れてたけど。」


「後でまわってこようと思ってたけど今する?」


「うん。いいよ!だからさ愛ちゃん一緒にここで受けよっか?」


「ゆきちゃんもするの…?」


「うん!一緒!」


「…わかった。」