懐かしい沖田さんの体温が、伝わってくる。


心臓の音も力強くて、何度も何度も波打ってた。


沖田さんが生きている証だった。



「良かった、本当に……!」


「心配かけてごめんね」



もっと他に考えることはあるだろうに。


こんなときまで沖田さんはあたしのことを一番に考えてくれる。



貴方はどこまで優しいんですか、


「こっ、こんなときくら……自分のこ、……考えっ……っ!」



「好きなやつがこんなに泣いてんのに、ほっとけるわけないでしょ」



そういう沖田さんはもう泣いていなくて、すこし赤い目でふっと笑った。




「鼻水拭いて」


「そん、なのっ……どうでもいっ……」


「はやく」



いま鼻水なんてどうでもいいですよね!?


人は号泣したら鼻水だって出る。


泣いても鼻ひとつ垂らさない沖田さんのほうがおかしいんだ。



言いたいことはいっぱいあったけど、とりあえず沖田さんの言うとおりに鼻水を荒々しくぬぐった。



「これでいいです――――」




顔を上げたあたしに、すべてを言わせてくれなかった。




初めて触れた唇は前から知っていたかのように温かくて、暖かくて。


長く繊細なまつ毛が、涙に濡れてきらきらと反射していた。



……ずるいよ。




あたしもゆっくりとまぶたを閉じた。