止めたくても止められなくて。



これ以上見てられなかった。


誰よりも命を重んじてその尊さを知っている沖田さんの命が、こんなにも簡単に消えかかっているのを。

あたしはこれ以上、黙って見ていることができなかった。



「紅、うつるよ」


覆い被さるように、すがるように。


抱きついたあたしを沖田さんは遠ざけようとしなかった。


実際、もうそんな力も残されていなかったのかもしれない。



「いいっ……移っても、いいから…!」



ねえ、あたしもう沖田さんがいない世界は考えられないんだよ。


こんなに人を愛おしいと思ったのは、貴方がはじめてだったんだよ。




『――――大丈夫?』


薄暗い長屋で、綺麗な満月が照らしていて。


あの日貴方に出会えてなかったら、今のあたしはなかった。



困らせてるって分かってる。


本当に泣きたいのは、沖田さんのはずなのに。



その腕であたしの頭を何度も優しく撫でてくれる。



そのなぐさめが、今は胸が張り裂けそうなほど辛かった。