「オレが独りよがりで唄だと呼んでるモノが、本当に唄なのかどうか。兄貴とか、誰かが聴いて、唄だって認めてくれて。

そしたら、やっとそいつはちゃんと唄になるんだって思う。人に届く言葉じゃないと、オレは、瑪都流の唄だって言いたくない」



スッと耳に染み入ってくるような声で、訥々《とつとつ》としゃべる。


不思議なリズムの煥の語り口に、おれは聞き入ってしまった。



歌うことに対して真剣なんだな、って思った。


おれにはそういうもの、ないよな。おれも何かほしいな。



いや、手に入れるよりも先に、ボコボコの穴だらけになっちゃってるところを埋め戻さなきゃなんないかな。


ゼロになるまで修復して、全部そこからかな。


それってけっこう途方もないよな。



考え始めると、しんどくなる。