何を思いながらこの詞を書いたのかって、文徳が煥に訊いた。
煥はちょっと顔をしかめた。
「別に、普段どおり。思ったことそのまんまだ。オレが書く詞でいいのかどうか、いつもわからなくて、
最初に兄貴の前で歌うときも、最初にバンドで合わせてみるときも、最初にライヴで披露するときも、何ていうか……手が冷たくなってくような感覚」
怖い、って言いたいんだろうか。
自分自身の心を正直に書き綴った詞を、煥がいちばん信頼してる兄貴や、バンド仲間やオーディエンスの前にさらけ出す。
受け入れられなかったらどうしようって、煥は思うんだろうか。
煥の言葉を待って、沈黙が落ちる。
煥は、ふっと空を見上げた。
どこでもない場所に視線を投げ掛けながら、煥はマイクの前でささやいた。