「医療機器メーカーだっけ、あの会社」


「KHANのこと? 医療機器というか、車いすや義肢や介護用設備よ。最近、十代向けコスメブランドの子会社も起ち上げたらしいわ。

KHANの会長か社長に高校生の娘さんがいて、肌や髪にいいものを使わせたいからって」


「愛娘ひとりのためにブランド作っちゃうって発想と資金力がすごい。そういや、去年、まだあのビル建ってなかったよね」


「ええ。この場所、倒産したパチンコ屋が廃墟状態で残されてて、不良のたまり場になってたから大変だったのよ。ずいぶんキレイに生まれ変わっちゃって」


「そっか。姉貴、前はこのへんのサロンで働いてたんだっけ」


「表通りのオフィス街やショッピングエリアじゃなくて、もうちょっと奥まったあたりよ。

この町ね、実は大学や専門学校がけっこう多いの。だから、客層が気楽な感じで、あの雰囲気は好きだったわ。またこのへんで働けたらいいんだけど」