今日のは、悪夢だ。鮮やかでなまなましい悪夢。
目覚めたい。目覚めよう。
ほら。一、二の、三。
すーっと車が減速する。
体に掛かる重みが変化して、その現実感が、おれをすんなりと夢から引っ張り出してくれた。
タクシーの後部座席。白いカバーが掛かったシート。
姉貴が隣の座席でスマホをいじっている。シートベルトが胸の谷間を斜めに際立たせて、巨乳感が五十パーセント増量中。
姉貴が首を傾けて、おれの顔をのぞき込んだ。
「うなされてたわよ」
「だろうね」
「顔色が悪い。大丈夫?」
「いつもの夢だけど、シリーズ史上最悪に悲惨なバッドエンドだった」