「キャリー…
貴女、恋人が居るの？」

母の突然の問い掛けに驚くキャリー。
何故なら、ジョエルという恋人の存在だけで無く、自分が誰かに恋をしていることすら秘密にしていたからだった。

「えっ。ど、どうして？」

「ふふふ。やっぱりね。
私を誰だと思っているの？
最近の貴女を見ていたら、すぐに分かるわ。ふふふ。」

「ママ…黙っていて、ごめんなさい…
でも恋人のことは許してほしいの！」

シャリア家の一人娘・キャリーが恋をするということは、簡単に許される出来事では無い。
この先、父親が決めた相手と結婚させられてしまうかもしれない。
この恐怖に、キャリーは人知れず怯えていた。

「大丈夫よ。
パパは気付いていないし、このことはママと貴女だけの秘密。
貴女も普通の女の子だもの。
恋をして当然なのよ。」

「ママ…！」

「明後日、彼が良ければ３人でランチをしましょ。
貴女が好きになった人に会ってみたいの。きっと素敵な方なんでしょうね。」

「本当！？彼を誘ってみる！
きっと喜んでくれるはずよ！
ありがとう、ママ！
大好きよ！」

思わぬ母からの誘いに、キャリーは満面の笑みで答えた。

これが悪夢の始まりだと気付かずに。